「介護離職ゼロ」プランに対する課題は?
「介護離職ゼロ」プランに対する課題は?
人材不足の介護業界と政府の対応 でも書いたように、、今年に入って介護業界の現状に対する政策が打ち出されました。しかしながら、今のところは「介護離職ゼロ」プランに対する評価は好ましいものではありません。そこで具体的にどのような課題があるのか見ていきましょう。
「介護離職ゼロ」にいたっては、これまでの政策との整合性が問われる。特別養護老人ホームなどの介護施設を増やすというが、国は今年4月に特養の入居基準を原則、「要介護3」以上の人に絞ったばかりである。「施設から在宅へ」としてきた従来の方針にそぐわない。
施設を増やしたとしても働き手を確保できるのか、かなり疑問だ。本年度から介護報酬を引き下げ、賃金の低さが介護職不足に拍車をかけた。倒産する事業所も増えている。
まずは国の政策として今年から介護報酬を引き下げたことによって、そこで働く介護職員の賃金も上がることはなく、人材不足の解決には至っていないという点です。
介護報酬とは介護保険によるサービスにおいて、そのサービス提供を行った事業所や施設に対価として支払われる報酬のことです。これまでも介護報酬は3年に一度という期間を設けて改定率を変化させてきましたが、2015年に1月に大幅な変更が実施されたことで総額で9年ぶりの引き下げとなりました。
介護事業者の報酬は介護職員にも直接関係してくる項目ですので、報酬が引き下げられるということは賃金引き上げはより難しくなります。つまり、低賃金のままでは当然現状の介護の離職率は改善されず、結果として「介護離職ゼロ」も実現不可能であるというのが現実です。それに加えて介護事業所の倒産も増えるなど、国の政策がどこまで効果を発揮するのかは不透明な状況となっています。
東京商工リサーチはこのほど、2015年1~9月における「老人福祉・介護事業」の倒産件数が過去最多の57件に達したと発表した。前年同期(40件)と比べて42.5%増加した。
~中略~
東京商工リサーチによると、「人手不足に伴う人件費の上昇が経営を圧迫している。特にデイサービスセンターの倒産が多く、中でも小規模事業所の倒産が目立つ。今後は、介護報酬マイナス改定の影響が出てくるため、年末から来春にかけて倒産事業者がさらに増加するのではないか」と分析している。
具体的な数字を見てみるとより理解できます。 老人福祉・介護事業の倒産件数が前年同期と比べて42.5%増加したというのは大きな数字です。介護サービスの利用需要は増えているのにもかかわらず、事業所は減少しているという事実が浮かび上がってきます。
これからさらに倒産事業者が増加するという予想を考慮して考えると 「介護離職ゼロ」 を目指すには課題があることがわかります。ニーズはあるだけに、目標として掲げた以上は政府の早急な改善案が待たれるところです。